レース・トゥ・イレブン 〜 毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です 〜
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    第45話 ゲームボール
    JUGEMテーマ:連載
     
     「どうする?」龍は佐倉に問いかけた。佐倉はじっとテーブルを見つめている。
     「攻めるか、あるいは守るか・・・」
     
     龍はわざとどちらのプランの狙い目についても詳しく告げず、このラックを佐倉に預けた格好だ。ここで佐倉が迷っていたり黙っていたら、龍は自分が提案する答えをすでに持っていた。

     ところが彼女はすぐに答えたのである。それは「守り」だった。なんとなく、直感が彼女にそう言っているのである。
     龍はこくりと頷くと、そのプランの詳細を彼女に説明した。

      厚み、撞き点、力加減、そして手球の残り方、的球のルート。短クッションから少しだけ浮いた8番に向かって厚みを確認すると、佐倉はキューをやや立て気味にして少し下の撞き点に向かってストロークする。
     対戦相手の酒井や織田、そして周囲のギャラリーもそのショットの行方をおおかた想像していたし、静かに見守るのだった。
     
     
     ドン!力強いショットで手球を撞き出すと、手球は8番があった場所に止まり、その8番を強く押し出して短クッション、長クッションに速いスピードでするすると滑っていく。
     もう一度、反対側の長クッションに当たって勢いが弱まり、そして短クッション際に8番が残りさえすればポケットすることが困難になる配置のできあがり。そうなれば酒井が次の順番の龍プロに対して、より厳しいセーフティを求められる。
     
     そうなるはずであった。が、彼女の放ったショットは予想よりもやや弱く、厚みも少しだけ違っていたために2回目のクッションか大きく奥の方に入ってしまった。
     角度が広がった的球はするするとゆっくり、ポケットの方に近づいていき、あまり勢いのない的球は徐々に速度を失って、スルスルとテーブルの上を転がっていく。
     

     「おお」何人かのギャラリーが小声でそう言った。的球がポケットに近づくと、ギャラリーの声はさらに大きく盛り上がり、数人がもう入ったものとしてパラパラと拍手をしたのである。
     
     そして・・・その8番はコーナーポケットの中で勢いを完全に無くし、止まったかに見えた8番はギャラリーのため息が漏れる中、静かに動いてコトンという音と共にポケットの中に消えていった。
     
     
     「すみませんでした!」はきはきとした声で彼女は深く頭を下げると。相手の二人は「いいよいいよ」と手で合図を送った。
     
     セーフティでしのぎいでゲームボールを佐倉に撞かせてやりたい、という龍プロの想いは、このフロック球によって予定を狂わせてしまう。
     それでも龍はにっこりとほほえみ、やや距離のある真っ直ぐに近い球を慎重に、また慎重にと念入りに狙った。
     そして普段通り、何も特別なことは無いかのように、自然なショットを繰り出し、見事に9番ゲームボールをポケットに沈めたのである。
     

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      | 第二章 はじめての試合 | -
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        -- あらすじ --
        この物語は、主人公−佐倉がビリヤードを通じて様々な人と出会い、成長する様を描いていきます。 大学に通う一年生の佐倉は、同じ京都で間借りしている部屋の大家を通じ、ビリヤード場で働くことになります。人と接することが苦手で、自分の殻にこもっている彼女の心を、店の常連客らが徐々に開いていきます。 アットホームな雰囲気、厳しい先輩プレイヤーやプロの存在によって彼女の心境が変化していき、本格的なプレイヤーに成長していきます。やがてビリヤードがなくてはならない存在になり・・・。 序章で見せた佐倉の涙の意味するものはいったい・・・? これから始まるビリヤードのドラマに、しばしのお時間お付き合いください。

        -グーバーウォーク-



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