レース・トゥ・イレブン 〜 毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です 〜
第33話 試合デビュー
2011.07.19.Tue 07:00
JUGEMテーマ:連載
広々とした空間に12台のテーブルが整然と並んでいて、9個のボールと手球がそれぞれフット側クッションにきれいに並べられている。テーブルたちはプレイヤーを静かに待っていた。 32組、合計64名のプレイヤーたちはそれぞれに自分たちのキューを組み立てて、大きな模造紙に書かれたトーナメント表に見入ったり、そわそわと雑談をしたり、集中力を高めるために目を瞑っていたりした。
その佐倉は、天井を見上げたり、所在なげにきょろきょろと周りを眺めていた。 しばらく無言の状態が続いて、佐倉はちょっと勇気を振り絞って牛島に聞いてみた。「ねえ・・・」
「じゃ、行ってきます。」とお嬢と牛島のペアは二人に手を振ってテーブルへと向かっていった。
試合を見ているうちに、だんだんと緊張感が増していく佐倉。しかし見ていると、球を外して悔しがっている姿や、パートナーのナイスショットをほめる姿などは普段見ているものと何となく近いようにも感じてくる。 「そんなに緊張しなくても大丈夫。オレが頑張るから気楽に楽しんでくれたらいいよ。」龍プロは佐倉の両肩に、大きな手でポンと叩いた。その手のぬくもりを肩に感じると、佐倉は自分でも驚くほど、緊張のために肩がすくんでいるのに気付いた。すーっと深呼吸すると、肩の力がほどけ、気持ちが落ち着いたようだ。リラックスしてくると、さっきまでと違って、落ち着いて試合や周囲の状況が見えてくるようになってきた。
「ごめんなさい。」と佐倉が頭を下げると、龍プロは「弱いよりかはずっといい。」と褒めた。
| 第二章 はじめての試合 | -
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