レース・トゥ・イレブン 〜 毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です 〜
第30話 新パートナー
2011.06.28.Tue 07:00
JUGEMテーマ:連載 「本当はね、こういうストイックな練習より、もっとビリヤードを楽しんで欲しいんだけどなあ。」佐倉の練習風景を見ていて、そう漏らしたのは石黒だった。 (ビリヤードってのはもっと楽しくワイワイするもんだろう。こんなに練習ばかりで嫌になったりしないだろうか?)という点で、彼は彼女のことを心配していた。だから、ときにおもしろおかしく会話を交えることで、彼なりのサポートを続けるのだった。 佐倉のひたむきな練習風景は、すっかりこのビリヤード場に定着してきている。練習の甲斐あって、彼女のフォームもすっかりサマになっていて、ちょっと離れた的球でも、スパーン!という快音を響かせている。まだまだ荒削りでポジショニングや実戦経験に不安が残るが、このショットを見ているとしっかりした基礎ができつつあることが伺える。
佐倉がきょろきょろと納屋に置かれた諸々に目を奪われていると、大家が段ボール箱を引っ張り出し、「ちょっと手伝ってくれない?」と佐倉に助けを求めた。 「もし、これからも頑張るんだったら、これ、あげるよ。どうする?」 ジョイントキャップを丁寧に外してケースの中に、無くさないようにそっと仕舞い込んで、キューをジョイント部分で組み合わせる。ネジの擦れる音がキュッキュッと鳴りながら、最後の一締めで一本に繋がる感触が手に伝わる。 試しに撞いてみると、コーンという少し柔らかい音。練習で使っていたハウスキューとは格段に違い、耳障りが良くて、優しい感じの音がする。初心者の彼女にキューの善し悪しはもちろんわからないのだが、グリップもやや細くて、何となく直感的に「扱いやすいキュー」ということだけはよくわかった。
| 第一章 ビリヤード場へようこそ | -
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