レース・トゥ・イレブン 〜 毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です 〜
第29話 手土産
2011.06.21.Tue 07:00
JUGEMテーマ:連載 その週の日曜日、佐倉としては珍しくアルバイトのシフト以外でも店を訪れていた。試合に向けての練習をするためである。自費で撞くことにはなるが、レディス割引があるため大して負担にはならない。 ただ、客として店に来ているはずなのに、ついついいつものように他の客が使ったテーブルを掃除をしてしまったり、灰皿やゴミを片付けてしまう。お金を払って仕事もしているなんて変だなあ、と佐倉は思う。 「それ何ですか?」と聞くと、牛島は「ネットの速報」と答えた。それだけでは新入りの彼女にあまりに無愛想だと思い、「いや、あのね、龍プロが出ている大阪の試合の速報が見れるんですよ。ネットで。」
二人のゲームが少し始まったところで、牛島が周囲の注目を集めるように叫んだ。「凄い!!」
「昨日は自分でもある程度満足できる結果が出せたから・・・」と手には大阪の和菓子店で買った菓子折を持って、佐倉に手渡した。「これ、皆さんで。相田さんやマスターにもよろしくお伝えください。」
彼女は常連客らに自分のショットが見られることにはだいぶ慣れてきたが、プロに見てもらうとなるとまた別で、テストを受けているような緊張を感じる。 彼女にいくつかのアドバイスをすると、「このまま練習を続けるように。」と言った。「そしともう一つ。」なんだろう?と佐倉が龍の方に注目すると、「出るからには優勝を狙うぞ!」と明言した。佐倉は圧倒されて一瞬たじろいだが、龍プロの真っ直ぐな眼を見て少々赤面しながらも「はい!」と答える。 龍の眼からは満ちあふれた自信が、そして佐倉の眼からは揺るぎない信頼が、それぞれの眼に真っ直ぐ向けられた。一瞬の間ではあるが、ペアとして重要な信頼関係はこのときに強くハッキリと結ばれたのである。 佐倉のデビュー戦まで残すところあと1ヶ月となった。果たして・・・?
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