レース・トゥ・イレブン 〜 毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です 〜
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    ブログ移転のお知らせ
     いつもRace to Elevenをご覧頂き、ありがとうございます。

    しばらく更新が滞ってご迷惑をおかけしましたが、当ブログは第87話をもってビリヤード・ウォーカー(ビリヲカ)に移転することになりました。

    バックナンバーにつきましても、徐々に記事を移転していこうと思います。

    リンクは以下です。
    http://billi-walker.jp/index.php?topic=RaceTo11

    これからもご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


    芦木 均

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      | お知らせ | comments(0)
      第86話 BAZOOKA
      JUGEMテーマ:連載
      JUGEMテーマ:連続ブログ小説

       

       「あの男はなかなか現れませんな」
       葵のお抱え運転手である瀬名は、やれやれといった困った表情を浮かべた。あの男が来てから一週間が経過していた。
       「さあ…。なるように、なるわよ」
       無機質な表情から放たれた葵の言葉は、少しの期待を込めているように感じられる。
       
       
       
       その男の名は六道といった。
       チンピラ風の出で立ちでスロットマシンの前にどっかと腰を下ろし、ずっとスロットを打っていた。
       「金のあるときに出てもつまんねーもんだな」
       六道は何段にも重ねられたドル箱を抱えてレジに向かい、さっさと出て行った。
       「あの小娘のことが頭にちらついてちっとも集中できやしない」
       しかし、このところずっと勝ちっ放しなのである。
       
       「ケジメだけはつけなきゃな…」
       真っ白なジャケットを肩から担ぎ、四条通の歩道の真ん真ん中を、肩で風を切るようにさまよう。
       デパートのスポーツ用品売り場に行くと、その少女の背格好を店員に説明して、目当ての品を買い、茶封筒の中から代金を支払った。

       次に向かったのはビリヤード用品店だ。
       外から見ても何の店かわからないような雰囲気で、店内も薄暗かったが、中に入ると年配の男が腰に拳を当てながらゆっくりと出てきた。
       「今日は何をお探しで?」
       「ああ、女子供でもよく割れるブレイクキューを、な」
       「それならいいのがありますぜ…、へへへ」
       六道は手渡された派手なブレイクキューを、まるでライフル銃を品定めするスナイパーのように、根本から先端まで、途中を拳で叩いたりしながら見定めていた。
       「固い木だな、それに軽い」
       「なかなかよく出来た品でさ、反発力を一点に集めて…、ドカン!さ」
       「じゃあ、これもらってくぜ。それと、あれとあれでいくらだ?」
       「まいどあり!」
       店主は指先につばをつけて現金を数え、にやりと笑うと注文した品をゆっくりと梱包し始めた。
       「また何かありましたら、そこの番号にかけてくだせえ」
       「ああ」
       
       六道は気が進まない様子だったが、そのままタクシーを拾って葵のいる酒井家の邸宅へと走らせた。


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        | 第五章 ブレイクランアウト | -
        第85話 ゴスロリ少女とチンピラコーチ
        JUGEMテーマ:連続ブログ小説
        JUGEMテーマ:連載

         
         「なんですって!?」
         ビリヤードの世界においても噂というものは一人で歩き出すらしい。ゴスロリ少女、葵の情報源は主に兄からのものだったが、彼女がライバル視している佐倉南が試合でマスワリを出し、しかも準優勝したと聞いてはただ事ではない。
         
         葵の住む酒井家の豪邸の中にはビリヤードルームが設置されていた。それは彼女の自室の隣にあって、専属のプロがコーチのために雇われ、空いた時間をいつでもレッスンに当てられるようになっていた。
         高校一年生になったばかりの葵にも学校の勉強は大切だが、頭が良いからか家庭教師が優秀だからか、短時間でサラッと勉強を済ませてしまう。それ以外のほぼ毎日、たとえ短時間でもキューを手放すことはなかったのだが、ナインボールでブレイクから9番ボールまで撞き切った経験は今のところない。
         
         今日はビリヤードレッスンの日ではなかったが、彼女はそんなこともお構いなしに専属プロを電話で呼びつけた。
         
         「葵お嬢様、どういったご用件でしょうか?」
         レッスンプロはおそるおそる彼女にそう問いかけた。
         「なぜあの佐倉とかいう女にはマスワリが出せて、わたしには出せないの?」
         背の低い彼女がレッスンプロを下から見上げるように睨み付けた。
         「必要なレッスンはしています。そのうち、お嬢様にもきっと出ますから、どうか気長に・・・」
         そう言いかけた言葉を葵が遮った。
         「『そのうち』っていつかしら?あと一ヶ月以内に出せるようにできますか?」
         プロは言葉に詰まった。
         「う・・・。一ヶ月あれば近いところまでは行く自身はありますが、約束までは正直なところ・・・」
         「もういいわ。他の人に頼むわ。あなたは明日から来なくてよくってよ」
         「え?そんな・・・」
         レッスンプロの言い訳を遮るようにして、お付きの運転手、瀬名がプロの両肩をがっしりと掴み、部屋の出口の方へと向きを変えて外へと導いていった。
         「そういう訳ですから、どうかご承知おきを」
         「は、はい・・・」
         レッスンプロは両肩を落としながらすごすごと引き下がり、屋敷を後にした。

         


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          | 第五章 ブレイクランアウト | -
          第84話 ナイトクルーズ
          JUGEMテーマ:連載
          JUGEMテーマ:連続ブログ小説

           
           二人を乗せたマスタングは国道24号線を北上した。お嬢は赤信号で停車したときにふと助手席を見やり、涙を拭う佐倉に気付いた。
           
           「ん…」
           カーステレオもつけないで静かに車はクルーズを続ける。それからの二人はしばらく黙ったまま過ごしていた。
           お嬢は佐倉の涙の理由に想像を巡らせながらハンドルを握っていた。準優勝したのだからねぎらいの言葉の一つでもかけるのが普通だろうが、何かあるのだろうか。それともうれし涙を噛みしめているように味わっているのだろうか。いやそうではなさそうだ。

           沈黙を乗せた大きな車はそのまま道なりに滑るように進み、曲がるはずの交差点も過ぎていく。
           佐倉は京都の道については不案内だったが、それにしても何か変だ。
           「あれ? 京都駅?」
           そのとき初めて佐倉はお嬢の方を振り向いたが、彼女はしっかりと前を見て運転しているし、なぜか笑顔だ。
           「せっかくだからスイーツでもごちそうしちゃおうかな? …ってね」
           小さく舌を出して佐倉にウインクしてみせる。
           「あ! そういえば抹茶アイス! …食べるの忘れてた」
           「時間は大丈夫?」
           「あ、はい」
           そのまま二人を乗せた車は京都市内でもちょっとオシャレな北山の方に向かっていった。ちょっとしたナイトクルーズだ。


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            | 第五章 ブレイクランアウト | -
            第83話 ナイスプレイ!?
            JUGEMテーマ:連続ブログ小説
            JUGEMテーマ:連載
             
             「オレやったらこんな感じのセーフティやな。この状況での『攻め』はあり得へんな」
             ギャラリーの一人が連れの参加者と小声で話しかけている。セーフティとは、的球をポケットインすることを目的とせず、的球を隠したりシュートしにくいポジションに移動させることで相手を不利にするためのショットを指す。
             ポケットビリヤードのゲームにおいては、すべてのボールを順番にポケットインしていければそれで良いが、必ずしもそうとは限らない場面に出くわすことがある。そうしたときにプレイヤーはポケットする以外の選択をすることがある。手球を完璧に他の球に隠してしまうなど、戦略や発想の柔軟さが勝敗を決することも多い。
             付け加えるなら、ルール上はプレイヤーへの場外からのアドバイスは反則である。だからギャラリーでさえ、自分の発した言葉がプレイヤーに聞こえないように気を遣っていたのだ。
             
             決勝のテーブルに向かっていたのは佐倉、そして控えているのは対戦者の男性プレイヤーであった。対戦者の方も決勝戦のできばえは決して良くなかったが、そうしたこともあってゲームはお互いにリーチの場面。あと1セットを手にした方が優勝という”シビれる”場面だ。対戦者は静かに椅子に腰掛け、両手を眼前に組んで相手のミスを祈るような気持ちだったろう。
             
             一方の佐倉の方は完全にテンパっていた。決勝戦というプレッシャーの下での緊張感に押しつぶされそうになり、喉はからからに渇き、膝も手もガクガクと音を立てて震えているようだった。それにしても目の前の2球、あと8番と9番をポケットすれば勝利するにも関わらず、手球が8番ボールに近すぎる位置で止まり、あらゆる選択肢を封じ込めていた。どうしたらいいか分からず、彼女はただただテーブルを前にして立ち尽くし、時間だけが過ぎていった。
             ゾーンに入っていたときのような無数のラインは、今はただの1本さえも見ることが出来ない。何かわからなくても、諦めていてもショットをしない限りは自分のターンを終えることが出来ない。
             
             「あのー、そろそろショットしてくれません? もう時間も押してきてるんで…」
             大会の主催者が彼女にそう伝えた。
             「は、はい、もう少しだけ…、ほんの少しでいいから…」
             
             
             そのとき誰かが声を発した。
             「頑張れよ!」
             それに呼応するかのように別の場所からも
             「ねーちゃん、頑張れ!」
             その声の応援を受けて、彼女はテーブルから一歩後ずさり、天を見上げて深呼吸し、もう一度テーブルに向かっていった。

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              -- あらすじ --
              この物語は、主人公−佐倉がビリヤードを通じて様々な人と出会い、成長する様を描いていきます。 大学に通う一年生の佐倉は、同じ京都で間借りしている部屋の大家を通じ、ビリヤード場で働くことになります。人と接することが苦手で、自分の殻にこもっている彼女の心を、店の常連客らが徐々に開いていきます。 アットホームな雰囲気、厳しい先輩プレイヤーやプロの存在によって彼女の心境が変化していき、本格的なプレイヤーに成長していきます。やがてビリヤードがなくてはならない存在になり・・・。 序章で見せた佐倉の涙の意味するものはいったい・・・? これから始まるビリヤードのドラマに、しばしのお時間お付き合いください。

              -グーバーウォーク-



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